「正しい戦術」の積み重ねが「最善の戦略」を生むのではない
- 企業の「戦略」とは、企業の目標を達成するための「進むべき方向性」を示したものです。
- 一方で、「戦術」とは、戦略を達成するための「具体的な手段」となります。
ここで、
- 正しいと思われる戦術を個別に積み重ねていくこと(部分最適)、と
- 戦略を軸に戦術を効果的に組み合わせていくこと(全体最適)
とでは、外から見ると一見同じように見えますが、考え方は根本的に異なります。
2 の「戦略を軸に戦術を効果的に組み合わせていくこと(全体最適)」の方が目標達成の為には圧倒的に近道です。
一貫した戦略を軸に、相乗効果を持ちやすいように戦術を組み合わせていくことで、他社に模倣されにくい「持続可能な強み」を創り出すことができるからです。
サウスウェスト航空の事例
90年代に不況の只中にあった航空業で、ひとり飛躍的な成長を遂げたサウスウェスト航空は、優れた戦略を持つ企業として好例だと思います。
サウスウェスト航空の目標と戦略
彼らはアメリカの航空会社で、「最も高い収益性」と「最も高い顧客・従業員満足度」の達成を目標に掲げていました。
そして戦略としては、
- 「アメリカ国内を日帰り出張するビジネスマン」をターゲットの顧客とし、
- 飛行距離は短距離のみ
- 大都市のハブ空港ではなく中規模都市に集中
- 客席もエコノミークラスのみ、としました。
他の航空会社が国際線の拡大を競っていた時代でしたので、一見大きな時代の流れに逆行しているようにも見えます。
サウスウェスト航空の戦術
この目標と戦略を軸に、彼らは様々な戦術を採用していきました。
日帰り出張のビジネスマンに必要なサービスに限定
- 自らを「空飛ぶバス」と定義し、指定席・機内食・乗り継ぎ・荷物転送サービスを撤廃
- 機種を短距離用のボーイング737型機に統一
- まとめ買いによりコストが大幅に削減
- 同じ機種に統一した結果、メンテナンスの効率が向上
- 機内の掃除・乗客の乗り降り・メンテナンス時間短縮により、地上での機体待機時間(飛行機が着陸して離陸するまでの時間)は15分に大幅短縮 ⇒ 飛行時間の割合が伸びたため飛行機の保有台数を他社の4分の3に抑制
結果、運賃は抑えられ、運行スケジュールも安定しました。
一方で、「日帰り出張のビジネスマン」が必要とするサービスのレベルは向上しています。
顧客第二主義・従業員第一主義
- 顧客第二主義・従業員第一主義を採用
- 従業員を厚遇した結果、離職率が5%以下に低減
- この結果、新人育成コストは低減
- 経験者の割合が増えサービスレベルはさらに向上
運賃も安くサービスも良いので、顧客第二主義といいながら結果的に顧客満足度は飛躍的に向上しました。
ビジネスの結果
これらの戦術を採用した結果、
- ターゲット顧客である「日帰り出張のビジネスマン」が望むものは全て揃っており
- 望まないものは全て取り除かれている
そんな独自の強みを持った航空会社だと認識されるようになりました。
こうして、戦略を軸に戦術を効果的に組み合わせていくことによって、航空業界の他社が不況にあえぐ中、サウスウェスト航空は90年代に躍進を遂げました。
戦略は試行錯誤を繰り返して育成するもの
この戦略と戦術の全容は、ある日誰かの頭に閃いたものではありません。
明確な目標をもとに、何年も試行錯誤を繰り返して創り上げられた仕組みです。
「変わらない目標」と「粘り強く絶え間ない戦略の育成」が辿り着いた、芸術的な仕組みなのだと思います。
誰でも実行可能で、結果的に航空業界の地盤沈下を招いたマイルの導入のような事例とは全く違います。
優れた戦略は、企業の「持続可能な競合優位性」を生む
戦術とは選択するものですが、それは孤立した選択ではなく、戦略を達成するために「相互に有機的に組み合わせていくもの」だと思います。
こうして創り上げられ、育て上げられた仕組みこそが、他社が簡単には模倣できない、持続可能な強みとなるのだと思います。
個人のキャリア形成においても、戦略と戦術は不可欠
この企業の戦略の考え方は、個人のキャリア形成においても応用できます。
他の人が簡単に模倣できない、希少性のある独自の強みを戦略的に築くことで、人材としての市場価値を上げていくことができます。
メンターや転職エージェントを活用して、
- 自分の「強みの軸」となるものは何か
- その強みをさらに補完していくために効果的な「スキルや経験」は何か
- そのスキルや経験を得るために必要な「キャリアパス」は何か
などを定期的に相談し、軌道修正していくことが大切だと思います。
- 実際に転職しなくても、転職エージェントに相談することは問題なくできます。
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